2014/05/31 法律問題コラム
日給月給制の将来賃金の請求額
解雇が無効である場合、労働者は、解雇後の期間の賃金を請求することができます。解雇の後、実際には働いていないとしても、労務提供の不能について、無効な解雇を行った使用者に帰責事由があるため、使用者が危険を負担するものとされるからです(民法536条2項)。したがって、解雇された労働者が解雇の効力を争い、地位確認請求訴訟を提起する場合、請求の趣旨に、未払賃金及び将来の賃金の請求も加えるのが一般的です。しかし、賃金が日給月給制の場合、毎月の給与額が変動するため、将来の賃金を「金◯◯万円」と当然には言うことができません。請求の趣旨をどう書けばよいのか、疑問に思うところです。
この点、裁判例を見ると、たとえば「ジョブアクセスほか事件」東京高裁平成22年11月15日判決(労判1019号5頁)では、予想される就労日数が「年間240日(月間20日)余り」であって「年間252日(月間21日)には大きく及ばない」ことを根拠に日額2万円の20日分である40万円を月額と決め付け、毎月40万円の支払いを命じています。
実は先日、私が地位確認請求の労働審判申立てを担当した事件の依頼者が日給月給制でした。労働審判の場合は、将来賃金といっても「労働審判確定の日まで」という比較的短期間の将来賃金の請求となります。そこで、私は、上記裁判例も参考にしつつ、直近3か月の賃金の平均額を1か月あたりの額と決め付けて申立の趣旨に書きました。労働審判は調停成立で終了し、裁判所の判断が示されることはありませんでしたが、解決金の額の算定にあたって1か月あたりの賃金額については申立書の記載がそのまま採用されたものと理解しています。