法律問題コラム

2023/03/19 法律問題コラム

共有不動産の賃貸借について

共有している不動産を賃貸に供する場合、共有者全員の同意を要するのでしょうか。それとも、共有持分の過半数を有する共有者の同意があれば可能なのでしょうか。
この点、R3年の民法改正で明確化されましたので、ご紹介します。

不動産が複数人の共有となっていることは、共同相続の場合を始めとして、よくあることです。そして、不動産の利用方法として第三者に賃貸し、収益源とする方法も一般的なものです。
このことからすると驚くべきことのように思いますが、共有不動産の賃貸について、どのような要件で適法に行うことができるのか、従来の法律では明確ではありませんでした。

共有物の管理につき、民法は、広義の管理を変更(狭義の)管理保存行為の3つに分け、そのそれぞれに異なる決定方法を定めています。すなわち、共有物の変更であれば全員の同意で、管理であれば持分を基準とする多数決で、それぞれ決定するものとし、保存行為であれば各共有者単独の判断で可能としています。

3つのうち保存行為は、共有物の現状を維持する行為を言うとされていますので、何がこれに該当するかの判断は比較的容易です。たとえば、第三者が共有物を不法に占拠している場合に、その明渡しを要求する行為は、保存行為とされます。

これに対し、変更は共有物を物理的に変化させる(又は法律的に処分する)行為、狭義の管理は共有物を利用・改良する行為とされますが、両者の区別は、より微妙です。
たとえば、共有建物の賃貸借は、共有物を収益物件として利用する行為であると同時に、賃借人に対して賃借権を設定するという法律上の処分を行う行為としての性質をも有しています。この場合、賃貸借契約を締結する行為は、管理でしょうか、それとも変更でしょうか。

この点、賃貸借契約の解除については、管理にあたるとした判例がありました(最判S39.2.25)。
他方、賃貸借契約の締結については最高裁の判例もなく、従来、明確ではありませんでした。物権法の教科書や実務書を見ても、賃貸借契約の解除については上記判例を引用して管理にあたるとしつつ、賃貸借契約の締結については説明を避けるのが一般的でした。

これに対し、R3年改正民法は、次の区分に応じ、それぞれ所定の期間を超えない「賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利」の「設定」について、狭義の管理に含まれることを明示しました(252条4項)。
・樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃借権等 10年
・上記以外の土地の賃借権等 5年
・建物の賃借権等 3年
・動産の賃借権等 6か月

上記所定の期間を超える期間の賃貸借契約の締結は、変更にあたり、共有者全員の同意を要することになります。
ここで、建物の賃貸借については、普通借家契約の場合、たとえ契約期間が3年以内とされていても合意更新又は法定更新によって長期間存続することが見込まれるため、3年を超えない期間の賃借権の設定とは認められず、変更にあたると解されること(平野裕之『物権法 第2版』363頁)に注意が必要です。

今後、共有不動産について賃貸借を検討するにあたっては、上記の区別に基づいて変更管理のいずれに該当することになるかを検討のうえ、共有者全員の同意を要するのか、共有持分の過半数で行えるのかを判断すべきものといえます。