2014/07/26 法律問題コラム
婚約不当破棄の慰謝料額
昨年、婚約不当破棄の事案で慰謝料300万円を含む相当程度高額な賠償を命じる判決を得ました。破棄と破棄の撤回を繰り返した点など態様の悪質さが、そのような評価に結びついたものです。結局、控訴審で、ほとんど専ら相手方の無資力を理由に大幅な減額をして和解することにはなったのですが、裁判例を見ても、婚約不当破棄事案のように純然たる精神的損害について、裁判所はなかなか高額な慰謝料を認めていませんので、一審判決は、事例的意義があるといえる判決ではないかと思いました。
そこで、依頼者に、判決書を判例誌に投稿することについて相談してみたのですが、依頼者には抵抗がある様子でしたので、断念しました。たしかに判例誌では名前は仮名になるとはいえ、判決理由には事実経過の詳細が出ていますので、見る人が見れば誰のことか分かってしまう可能性は否定できません。ですので、本人が懸念を抱くのは、もっともなことです。
ですが、類似事案の被害者救済のためには、高額賠償を認める裁判例が判例誌に出ていれば力になりますので、その意味では残念に思います。ひょっとすると、判例誌にこの手の事案で高額賠償を認めた裁判例が多く見られないのは、依頼者のプライバシーとの兼ね合いから、勝っても積極的に判例誌に投稿しないのが一般的であることも1つの理由かもしれない、などと想像した次第です。