弁護士雑記帳

2026/03/31 弁護士雑記帳

法律相談の上手な受け方

弁護士に相談する際、相談がスムーズに進むために心掛けることが望ましいと私が思う事柄を整理してみたいと思います。

1.メモを用意すること
2.固有名を用いること
3.資料を携行すること
4.重要な資料は紙で用意すること


1.メモを用意すること

ご相談のご予約を受ける際、私は、ほぼ全件で、できれば相談内容の事案に関するメモをご用意いただきたいとお願いしています。メモに書いていただきたい事柄は、①基本的な事実関係・背景事情、②事実経過の概要(時系列)、の2点です。

相談の際には口頭で相談内容のご説明をいただきますが、口頭だとどうしても重要な事項が漏れてしまったり、言い間違い、聞き間違い等の問題を生じがちです。用意したメモを示しながらご説明いただくことは、それらの問題を防ぐとともに、相談時間を節約するために役に立ちます。

中には、書きためた書面を何十枚とお持ちになる方もいますが、そのような場合、全部読んだのでは、かえって相談が長時間になってしまうため、重要な部分をご指摘いただいてそこだけ読むか、あるいは読まずに口頭でのご説明をお願いすることになります。A4用紙1~3枚程度に整理していただくのが適当だと思います。


2.固有名を用いること

メモでも、口頭の説明でも同様ですが、相談内容において登場する重要な人物や会社等については、どうしても秘匿したい特段の事情がない限りは、固有名を用いていただくことが適当です。
最近は、個人情報保護の観念が浸透したせいか、固有名を用いず、仮名や肩書を用いて説明しようとする人が増えた印象があります。

しかし、弁護士には守秘義務があります。弁護士に相談時に話した内容の秘密は厳守されますので、心配せずに固有名でお話しいただきたいと思います。
以前、相談者のお話に「課長」「課長」と繰り返し出てくるので、こちらは同一人物のことと理解しつつしばらく話をした後に、どうも辻褄が合わないなと思って確認したら、「それはまた別の『課長』です」と言われたことがありました。似たようなことは、ときどきあります。そのような場合、誤解した状態で話をした時間が無駄になってしまいます。

そうならないよう、登場人物については(「姓」「名」でなくても「姓」だけでも)固有名で名指していただくのが適当です。「A氏」「B氏」などと仮名で呼ぶことも、名無しよりはましですが、混乱しがちですので、実際の固有名を用いていただいた方がより適切だと思います。


3.資料を携行すること

相談したい事項に関連する資料で手元にあるものは、なるべく全部、携行していただくことが望ましいです。とくに、何らかの契約に関するご相談であれば、契約書その他の契約内容を明らかにする資料は必須です(手元にない場合には、なくて仕方がありませんが。)。

かなり以前のことですが、借家契約の解除に関するご相談なのに、賃貸借契約書を携行せずに来所された方がありました。契約書は家にはあるが、今日は持ってきていないと仰るのです。
たしかに借家契約の場合、賃借人は借地借家法で保護されていますし、契約書を見なくとも言える事柄はあります。とはいえ、契約内容を把握するためには、まずは契約書に記載された約定を確認する必要があることは、他の契約類型と異なりません。

相談者が契約書等の基本的な資料を携行されていない場合、弁護士としては、一般的な契約内容を想定しつつ、「契約書を見ていないので確たることは言えないが」という保留付きで回答せざるを得ません。その場合、実際には契約書に特約の記載があり、特約を考慮すれば誤った回答であったということになる可能性があります。そのような恐れを回避するため、契約に関するご相談の際には、契約書その他の契約内容を明らかにする資料を(それが手元にある限りは)必ず携行なさってください。


4.重要な資料は紙で用意すること

最近は、資料をデジタルデータでお持ちになる方も増えました。ご相談の際に、お持ちになったノートパソコンやスマホの画面に表示させた画像で資料を拝見することはよくありますし、2~3枚の書面ならデータのコピーを頂戴できれば当方で印刷したうえで、お話を伺うこともあります。

ですが、スマホの小さな画面ではもちろん、ノートパソコンでも、紙の資料に比べると、読み易さ、一覧性、見たい部分への到達の容易性等の点で劣ることは否めません。
資料をデジタルデータでお持ちの場合、必要になるかどうか分からないような資料まで印刷してお持ちになる必要はありませんが、必ず必要になるであろう重要な資料については、印刷したものをお持ちいただいた方が相談が円滑に進む可能性を高めますから、なるべくは印刷してお持ちになることをお勧めします。


以上いろいろ述べましたが、飽くまで「相談がより円滑に進み、より適切な回答を得られやすくする」という観点から、その方が「望ましい」と思うことを書き出してみたに過ぎません。決して「ここに書いたことを守れない相談者は来るな」という趣旨ではありませんので、「『注文の多い法律事務所』だ!」と、相談を敬遠されることがありませんよう、お願いいたします。