弁護士雑記帳

2017/09/09 弁護士雑記帳

ノックは2回か、3回か

いつのころからか、ビジネスマナーとして「ノックは3回するもの」という説を耳にするようになりました。

「2回ノックはトイレノックだから」という理由だそうです。いったい誰がいつ2回ノックをトイレの専売特許にしたのか、と思いますが、私は、この説に全く賛同できません。

第1に、「3回ノック論者」もトイレノックは2回であると認識しているようですが、トイレで2回ノックすることには理由があります。1回では、間違って体があたるなどして音がした可能性があり、「誰かが意図的にノックしている」と相手方に知らしめるためには2回ノックする必要があり、かつ2回ノックすれば十分だからです。そして、この理は会議室・応接室のドアをノックする場合にも全く同様に妥当します。会議室・応接室のノックをトイレノックと別異に扱う合理的な理由がありません。

第2に、「ノックは3回」説が世間に流布したのは2010年代に入ってからのことではないでしょうか。私が会社勤めをしていた1990年代初頭はもちろん、その後弁護士になってからも、3回ノックをされたことは記憶にはほとんどありません。3回以上のノックをされて驚くようになったのは、ここ数年のことです。すなわち、何ら伝統的なマナーではなく、誰かが言い出して広めたにわかマナーに過ぎないと思われます。

第3に、私は3回以上ノックされると何か急かされているような気持ちになり、不快に感じます。「ノックは3回」説論者は「2回ノックはトイレノックを想起させて不快」というのかも知れませんが、そのような感性の方があるとしても一部の女性に止まるだろうと推察します。なぜなら、男性にとってトイレの個室に入ってノックをされるという経験は日常的なものではないからです。女性であっても、オフィスでバリバリ働いている方であれば、会議室・応接室でノックされることの方がトイレでのそれよりも多いのではないでしょうか。

したがって、私は「ノックは2回」と声を大にして言いたいのです(と、力むような事柄ではありませんが・・・(笑))。
そして、私は、今日も依頼者の待つ会議室へ、2回ノックをして入っていきます。決して「ノックは3回」説を知らないからではないので、その点誤解無きよう願います。