法律問題コラム

2018/04/29 法律問題コラム

電話会議による遺産分割調停

現在、受任している遺産分割事件の関係で愛媛県の某家庭裁判所で調停を行っています。といっても、その家庭裁判所には今のところ一度も足を運んでいません。調停期日には電話会議の方法で参加しているためです。

2013年1月1日に施行された家事事件手続法は、当事者が遠隔地に居住している場合に、家事調停の期日を電話会議システムによって行うことを可能としました(家事事件手続法258条1項、54条1項)。実務の運用では、本人確認及び非公開性の担保のため、代理人弁護士の事務所に電話をつなぐ場合の他は、他の裁判所に電話をつなぐ方法でのみ電話会議システムの利用を認めているようです。

従来は、家事調停で電話会議は認められていなかったため、代理人弁護士としては期日ごとに実際に裁判所に出頭する必要がありました。家事調停事件の管轄裁判所は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所です。しかし、遺産分割調停では、他の共同相続人らが全国各地に散らばっていることが少なくありません。そのため、調停を申し立てる裁判所が遠方となる事件を受任した場合、依頼者には旅費・日当の負担をお願いしなければなりませんでした。このことが、他の共同相続人の住所地が遠方である場合に、弁護士に依頼して遺産分割調停を行うことのネックになっていたといえます。

現在は、遺産分割調停を遠方の家庭裁判所で申し立てる必要があるケースでも、電話会議の利用により、少なくとも期日ごとに旅費・日当が発生することはなく弁護士に依頼することが出来ます。弁護士の立場からすれば、以前よりも受任しやすくなったといえます。遺産分割協議が合意に至らない場合、是非、積極的に弁護士にご相談いただければと思います。