法律問題コラム

2016/02/24 法律問題コラム

信用保証は一方的に解約できる?

継続的取引を行うにあたって、取引先から取引によって生じる一切の債務について連帯保証する保証人を付すよう求められるケースがあります。信用保証又は根保証と呼ばれます。

限度額の定めも期間の定めもない信用保証の場合、保証人の責任は無限に拡大する可能性があり、保証人にとって過酷な事態となるおそれがあります。とくに主債務者の信用状態が悪化した場合や、主債務者との信頼関係が失われたような場合にも、その重い責任を負い続けなければならないのかが問題となります。

保証契約も契約である以上、一方的に解約できないのが法律の原則となります。そして、この原則を修正する規定が民法にはありません(民法465条の2が「貸金等根保証契約」に関する規定を置いていますが、適用されるのは、保証の対象となる債務に「金銭の貸渡し又は手形の割引を受けることによって負担する債務」が含まれている場合に限られます。)。 そうすると、契約の相手方である債権者の承諾を得ない限り、保証人は責任を免れることができない、ということになりそうです。

しかし、判例・通説は、期間の定めの無い信用保証について、相当期間を経過した後は、保証人は将来に向かって解約の意思表示をすることができ、意思表示から一定の期間経過後に契約は終了することを認めています。「相当期間」がどの程度の期間なのかは具体的事情により、主債務者の信用状態の変化なども考慮されるものと思われます。ちなみにリーディングケースとされる大審院昭和7年12月17日は、期間の定めも極度額の定めもない信用保証について、保証契約締結後わずか2年半程度の時点でなされた解約の意思表示を有効と認めています。 また、主債務者の信用状態が著しく悪化したような場合には、期間の定めの有無に関わらず、直ちに解約することができるとされています。

このように解したとしても、保証人から解約申入れのあった場合には、債権者は債務者の資力・経営状態を調査し、危険を感ずれば、取引を停止するか、債務者に別の保証人を立てさせるなどの措置をとればよく、一方、解約を通知した保証人は将来に向かって責任を免れるとしても、そのときまでに主債務者が負担した債務については保証人としての責任を負わなければならないので、不都合はないと考えられます。

なお、現在(2016年2月)、国会に上程されている民法改正案では、法人でない保証人がする信用保証については、書面等で極度額を定めなければならないとする規定が設けられています(465条2項、3項)。