2019/05/05 法律問題コラム
自動更新条項による更新と法定更新
住宅等の建物の賃貸借契約には、自動更新条項が付されていることがよくあります。契約期間の定めに続けて「ただし、期間満了の6か月前までに貸主・借主のいずれからも契約を終了させる旨の通知をしないときは、契約は2年間更新されるものとし、以後も同様とする。」などと規定しているアレです。世間一般になじみ深い契約条項であるにも拘わらず、その効果については文献でもあまり触れられておらず、誤解されている向きもあるようですので、解釈を述べたいと思います。
もともと建物の賃貸借契約は、自動更新条項がなかったとしても、当事者が期間満了の1年前から6か月前までの間に更新しない旨(又は条件変更しなければ更新しない旨)の通知をしないときは、従前の契約と同一の条件で更新したものとみなされます(借地借家法26条1項)。通知をした場合であっても期間満了後に賃借人が使用を継続し、賃貸人が異議を述べなかったときや(同法26条2項)、貸主がした更新拒絶に正当事由がない場合も同様です(同法28条)。このように法律の規定に従って認められる更新を「法定更新」といいます。
では、期間満了前に双方から契約を終了させる旨の通知がなく、賃貸借が継続した場合、賃貸借契約書に自動更新条項があったとしても、契約は法定更新されたことになるのでしょうか。
上に引用した借地借家法の各条項は、片面的強行規定です。すなわち、これらの規定に抵触する特約であって賃借人に不利な合意は無効となります(同法30条)。
しかし、上述の自動更新条項は、借地借家法の規定よりも期間満了時の賃借人の保護を弱めるものではないため、無効と解すべき理由はありません。自動更新条項が有効なら、契約は当該条項に従って更新されるのであり、法定更新ではないことになります。
その違いは、更新後の契約期間の定めの有無に表れます。法定更新の場合、更新後の契約には期間の定めがないことになるのに対し(借地借家法26条1項本文ただし書)、自動更新条項による更新の場合、当該条項に更新後の期間の定めがあるときは、原則としてその定めに従うことになります。期間の定めがあれば、期間満了までは正当事由の有無に関わらず、賃貸人から解約申入れすることはできませんので、その意味では賃借人にとってより有利であるといえます。
もちろん、自動更新条項があっても、賃貸人から更新拒絶の通知があるなど、当該条項に規定する不更新事由に該当する場合、自動更新条項による更新は生じません。その場合において、期間満了後に賃借人が使用を継続して賃貸人が異議を述べないときや、更新拒絶に正当事由がないときには、法定更新を生じることとなります。