異なる職種への配転命令の適法性

職種が限定されていない一般的な雇用契約の場合、会社の就業規則に「業務の必要に配転を命ずることがある」といった条項があれば、それだけで会社は原則として労働者に配転を命じることができることになります。

労働者にとっては、新しい部署での仕事は大きな心理的負荷となりますし、とくに職種が全く異なる部署への配転を命じられた場合は、その程度は著しいでしょう。そのため、退職を強要する手段として配転命令が利用されるケースもあります。

 

そのようなケースに関し、労働者の保護の観点で有意義な裁判例があります。直源会相模原南病院(解雇)事件東高判H10.12.10(労判761号118頁)がそれです。病院がケースワーカー及び事務職員をナースヘルパーへの配転を命じた事案ですが、裁判所は、「業務の系統を異にする職種への異動、特に事務職系の職種から労務職系の職種への異動については、業務上の特段の必要性及び当該従業員を異動させるべき特段の合理性があり、かつこれらの点についての十分な説明がなされた場合か、あるいは本人が特に同意した場合を除き、一審被告(使用者-引用者注-)が一方的に異動を命じることはできないのと解するのが相当」と説き、配転命令を無効としました。

 

上記裁判例の事案もそうですが、配転命令が違法・無効であれば、労働者が配転を拒否したとしても、解雇事由とはなりません。配転命令拒否を理由として解雇がなされても、その解雇もまた違法・無効であることになります。