準消費貸借による債権の消滅時効期間

売掛金や賃料等、様々な理由で生じた債権の未払いが累積しているときに、累積した未払額を貸し借りしたことにして借用書を差し入れるというケースがあります。法律的には準消費貸借契約(民法588条)が交わされたことになります。


消費貸借契約であれば債権の消滅時効期間は、原則として10年、消費貸借契約が当事者のいずれかにとって商行為にあたる場合は5年です(民法167条1項、商法522条)。準消費貸借の場合、もともとの債権が短期消滅時効にかかるものであったとしても、時効期間は延長され、上記の消費貸借契約に基づく債権の消滅時効期間と同様となるのでしょうか。


この点、学説では、準消費貸借がなされた趣旨によって決めるべきであり、たとえば、単に期限の猶予を与えるだけの趣旨で準消費貸借がなされたような場合には、消滅時効期間は旧債務のそれによる、とする説も有力に主張されています(『新版注釈民法(15)』33頁)。
ですが、判例は、準消費貸借をする当事者の意思は、既存債務を消費貸借に関する規定に服させようとするものである旨判示して、準消費貸借が商行為としてなされた事案において5年の商事時効の適用を認めています(大審院昭和8年6月13日判決・民集12巻15号1484頁)。このような判例の立場からすれば、準消費貸借による債権の消滅時効については、もっぱら準消費貸借契約そのものを基準として定まるのであって、旧債務に関する短期消滅時効の適用は無いものと考えておくべきでしょう。


したがって、冒頭で申し上げたような借用書を差し入れる際には、時効期間が延長される結果となるかも知れないことに注意が必要です。