委任契約は当事者が死亡すれば必ず終了するか

民法653条は、委任の終了事由として「委任者又は受任者の死亡」を挙げています。すなわち、民法の規定に従えば、委任契約は当事者のいずれかが死亡した場合にはその時点で終了することになっています。委任契約は当事者の信頼関係に基礎を置く契約であることが根拠とされます。委任者と受任者との間に信頼関係があったとしても、その相続人との間に信頼関係があるとは限らない、というわけです。

 

では、自分が死んだ後に何かをするように依頼する内容の委任契約を締結しても無効なのでしょうか。受任者が依頼されたことを実際にしようとした時点では、委任者が死亡しています。委任者の死亡により委任契約が当然に終了するのであれば、受任者は、受任した事務を契約に基づいて処理する権利も義務も有しないことになってしまいそうです。

 

しかし、実際にはそのようにはなりません。通説・判例は、民法653条を任意規定であると解しており、当事者の合意によりその適用を排除することが可能とされています。

 

この点、「自分が死んだ後」になすべき事務を依頼する場合、委任者の死亡によって契約が終了してしまうのであれば、契約をする意味がありません。したがって、そのような契約には委任者の死亡によっても契約は終了しない旨の特約が黙示的に付されていると解されます。

 

最高裁は、「自己の死後の事務を含めた法律行為等の委任契約が丙山と上告人との間に成立した」という認定事実に照らせば、「当然に、委任者丙山の死亡によっても右契約を終了させない旨の合意を包含する趣旨のものというべく、民法653条の法意がかかる合意の効力を否定するものでないことは疑いを容れないところである」と判示しています(最判平成4年9月22日金法1358号55頁)。