「粗利は『売上』引く『仕入れ』や!」

ずいぶん前のことになりますが、弁護士になって間もないころ、ある先輩弁護士と共同で建築会社の訴訟を担当したことがあります。打合せの中で、私が依頼者が得る粗利について、依頼者が契約した請負代金から下請業者に対する支払いを差し引いて計算したところ、先輩弁護士から間違っていると指摘を受けました。そのときに先輩弁護士が発したセリフが見出しのカッコ書きです。粗利の計算で下請代金を控除するのは誤りだというのです。


私は、建設業簿記は知りませんが、会社員時代に日商簿記2級を取っており、工業簿記をかじっていました。工事を下請けに出し、下請業者に工事代金を支払うなら、それは製造業の場合の外注加工費のようなものであり、製造原価にあたるから、粗利(売上総利益)の計算からは当然差し引かなければならない、と考えて上記のような計算をしました。
仮に先輩弁護士の言うとおり下請代金を控除しないとすると、その依頼者は現場責任者を出すだけで工事のほとんどを下請業者に任せていましたので、粗利率は恐ろしく高率になってしまいます。


先輩弁護士は弁護士仲間で簿記の勉強会をしているという話でしたが、おそらく学習範囲は商業簿記のみで工業簿記には触れたことがなかったのでしょう。そのとき、私は、依頼者の手前、先輩弁護士の顔を立てて反論しませんでしたし、依頼者も何も言いませんでしたが、あるいは内心で呆れていたかも知れません。


弁護士の専門は法律ですが、企業取引に関する紛争では簿記や会計の知識が必要となることがあります。したがって、企業取引に関する紛争を担当することがある以上は、簿記や会計の知識の習得も怠ってはならないと自戒しております。