「事実の摘示」は名誉毀損の要件か

人の名誉を毀損する行為は、名誉毀損罪として刑事責任を問われうると同時に、民事上の不法行為として損害賠償請求及び回復処分請求の原因となりうるものです。

 

しかし、刑事と民事とで、その要件を巡って全く同一の議論がなされているわけではありません。

たとえば、刑法上の名誉毀損は、「公然と事実を摘示」して人の名誉を毀損することが要件となっていますが(刑法230条1項)、判例は、名誉毀損が事実の摘示によるものでなく、意見ないし論評の表明によってなされた場合であっても民事不法行為としての名誉毀損に該当しうることを認めています(大判明治43年11月2日民録16輯745頁、最判平成9年9月9日民集51巻8号3804頁)。

 

民事不法行為としての名誉毀損の成否について考察する場合、刑法上の名誉毀損罪に関する議論は示唆に富み、参照に値しますが、その差異にも充分注意を払う必要があるといえます。