労働審判の勧め

突然、クビを告げられ、「不当解雇だ」と思っても、争うことを躊躇する方は少なくないと思います。躊躇する理由の1つが、「争えばいつ解決するか分からず、長期にわたって不安定な状態に置かれてしまう。」という懸念でしょう。当然の懸念といえますが、係争が長期に及ぶ危険は、今日、労働審判の制度によって相当程度、軽減されています。
労働審判は、原則として3回までの期日で終了することが法律上、決められています(労働審判法15条2項)。実務的には、大阪地裁の場合、第2回期日で終了するよう運用されており、第3回期日は予備日のような位置づけであるとさえ言われています(『労働審判=紛争類型モデル(第2版)』24頁)。
労働審判で調停が成立しない場合、審判が言い渡され、この審判に不服がある当事者は、異議を申し立てることができます。異議の申し立てがあれば、通常訴訟に移行しますので結局、これまでと同様、訴訟で長期にわたって係争が続く可能性がないわけではありません。ですが、とくに解雇事件の場合、通常訴訟で長期にわたって争った挙げ句、判決で解雇無効となったときには、会社は、当該労働者に対し、係争期間中の賃金を(働いていないにもかかわらず)支払うことを余儀なくされます。そのリスクを考慮すれば、会社側には労働審判までで事件を解決する強い動機が働くことになります。その結果、労働審判が申し立てられた事件が通常訴訟に移行するケースは少ないのが実態です。平成25年の大阪弁護士会夏期研修で大阪地裁第5民事部の中垣内健冶裁判官が語ったところによれば、大阪地裁における労働審判では、第1回期日で調停成立に至る事件が約2割、第2回期日で調停成立に至る事件が約6割あり、さらに、調停が成立せず、審判が出た事件でも約4割が異議申立てされず確定しているそうです。圧倒的多数の事件が、労働審判の手続き内で解決に至っているということになります。
したがって、不当に解雇を言い渡されたなら、必ずしも職場復帰に固執しない場合にはとくにそうですが、労働審判の申立てを検討されることを是非お勧めします。